彼らは哀れな令嬢の体を釘付けにし始めたのだ。掌を釘付けにされる乾いた音とともに珠子の口からいよいよ悲痛な声がほとばしる。珠子はいよいよ必死でのたうち、手足をばたつかせ抵抗するが、男達は彼女の左右の掌をあっという間に釘付けにしてしまった。
男たちは、珠子の体がずり落ちないよう彼女の美しい乳房の上下を菱縄で磔柱に縛り付けると、続いて必死で捩り合わせる腿を割裂くように足を大きく広げ、磔柱の下の横木に押し当てた。
「いやだぁーっ…ヒイイィッ…ヒイイイィーイッ…磔…磔なんていやだぁーっ、ああっ…助けてぇーっ…何でも…何でもするから助けてぇーっ。」
そして死の恐怖、それも恥ずかしい処までさらしたまま殺される恐怖に一層無残に悶え泣く珠子の足の甲に、容赦なく五寸釘が打ち込まれ、悲痛な絶叫が化物屋敷にこだました。
こうして相川珠子という美しい生贄を、全裸のまま士の字型の磔台に手足を大の字に広げて釘付けにすると、手下達はよいしょという掛け声とともに磔柱をもとのように立てた。
今やその磔柱には、残酷な磔人形に代り、美しい肢体を余す処なくさらし無残に泣き狂う美しい令嬢、相川珠子の体が高々と大の字に打ち付けられているのだ。
「ああっ…ヒイイィーイッ…助けてください…どうして…どうして私こんな目に…お願い助けてぇーっ、お願い殺さないで…何でも…ああ…何でも…何でもします…本当です…お願い助けて…。」
珠子はさらに無残に、哀れに、蒼白になって悶え泣く。一方、赤サソリたちはそんな珠子の、苦労して手に入れてたっぷり責め苛み弄んだ美しい獲物の余りに無残な姿を食い入るように見詰めている。
死化粧のつもりで施された薄化粧も早くも涙と汗で剥げ落ち、死物狂いで抵抗したため整えられた髪も乱れに乱れている。
それでも赤サソリの言った通り、大柄で均整のとれた珠子は、しなやかな四肢を大の字に広げ、初々しい色香に溢れる裸体を余す処なく晒していた。磔にされてもやはり、と言うよりむしろそれだけ一際美しいのだった。
その美しい彼女の掌と足の甲には五寸釘が打ち込まれ、指が苦痛に宙を掻き毟っていた。想像を絶する恐怖と苦痛、屈辱に可憐な頬に美しい涙を次々に溢れさせて、三尺高い処から見開いた瞳で必死で哀れみを乞い、許しを求めていた。
それに、数々の責めと凌辱を受けた珠子の瞼は泣き腫らし、木目細かな白い肌には無数の赤い条痕が刻みこまれ、そして恥ずかしい処を覆うべき下腹部の茂みは完全に姿を消し、秘部も肛門も全てむきだしになっていた。
その一つ一つが、聡明で清純な美しい令嬢の磔という陰惨な姿の効果をより高め、被虐の美しさを凄絶にしているのだった。
もうすぐこの美しい生贄は槍に脇腹を抉られ、血みどろになってのた打ち回った挙げ句、肛門から口まで串刺しにされ、凄まじい苦痛に苛まれながら嬲り殺しに殺されねばならないのだ。そしてそのままの姿で晒し者にならねばならないのだ。そう思うと彼らの興奮はいやが上にも高まってきた。
そして一寸法師は、興奮に耐えかねたようにあの地獄の底から聞こえてくるような安来節を唄い始めた。
「ううっ…許してください…お願い許してぇーっ…何でもします…何でもするからだから…だから助けてぇーっ、ヒイイィーイッ…ヒイイイィーイッ…怖いわ…お願い殺さないで…死…死ぬのはいやだぁーっ…ああっ…ああ…絶対にいや…いやぁーっ。」
一方、全裸のまま大の字に釘付けにされた珠子はいよいよ激しさを増す、頭が破裂しそうな恐怖と羞恥、苦痛にのた打ち回り、恥も外聞もなく命乞いをし、哀願し、泣き喚いていた。
槍に肌を抉られるのは、そして全身串刺しになるのはどんなに痛いだろう、苦しいだろう、この人たちは何の罪もない自分をどうしてこんな恐ろしい方法で処刑するのだろう、本当に死んだ後もこんな惨めな姿のままで人々の目にさらして辱めるのだろうか、死にたくない、死ぬのはいやだ、もっともっとしたいこともたくさんある、彼氏ともっともっと会いたい、お父様、お兄様助けて、神様助けて、死にたくない。−そんな思いがただの十八歳の娘の胸を嵐のように駆け巡り、気も狂わんばかりに責め苛んだ。
しかしその様は、いよいよもって残忍な悪魔たちをそそらせる。そんな令嬢の姿を絵画でも鑑賞するかのように眺めていた赤サソリは、いよいよこの美しい生贄の処刑に取りかかった。
「ヒイイィーイッ…ヒイイィーイッ…助けてぇーっ…死にたくないよう…助けて…誰か助けてぇーっ…死ぬのはいやだぁーっ…ああっ…ああ…絶対にいやだぁーっ。」
ますます凄まじさを増す恐怖に、助けを求めてさらに無残で哀れな声を張り上げ、大の字にされた体をのた打たせる珠子の前に、赤サソリは偽探偵と細身の槍を手にして進み出た。
「ヒャアアーアッ…ああっ…ヒャアアーアッ…殺さないで…何でもします…本当です…だから…だから殺さないで…。」
自分を処刑する槍を目にした珠子は美しい顔をクシャクシャにし、一層哀れに泣き狂った。
もうだめだ、ついに助けは来なかった。自分は春川月子のように殺されるのだ。いや、この悪魔たちはすぐに殺してはくれないだろう。
まだ夢多き年頃なのに、肌を槍で抉られ散々苦しみ泣き叫んだあげくお尻の穴から口まで串刺しにされ、珠子はあの人形そのままの無残で哀れな姿にならなければならないのだ。そしてその姿を、恥ずかしい処までさらしたこんな惨めで哀れな姿を見せ物にされるのだ。それはどんなに恥ずかしいことだろう、父や兄はどんなに悲しむだろう。
恐怖に見開かれた目を槍の穂先から離すこともできない令嬢の胸は、そんな引き裂かれんばかりの思いで満たされる。普段の珠子なら恐怖のためにとっくに悶絶していたろう。しかし先刻の強壮剤注射の為に、美しい生贄は気を失ってこの恐怖からのがれる自由もなかったのだ。
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